本と映画があればいい

本や映画の感想など好きなように書いてます

ミステリ小説感想 : キネマ探偵カレイドミステリー

 

 

[あらすじ]

「休学中の秀才・嗄井戸高久(かれいどたかひさ)を大学に連れ戻せ」。留年の危機に瀕するダメ学生・奈緒崎(なおさき)は、教授から救済措置として提示された難題に挑んでいた。しかし、カフェと劇場と居酒屋の聖地・下北沢の自宅にひきこもり、映画鑑賞に没頭する彼の前に為すすべもなく……。そんななか起こった映画館『パラダイス座』をめぐる火事騒動と、完璧なアリバイを持つ容疑者……。ところが、嗄井戸は家から一歩たりとも出ることなく、圧倒的な映画知識でそれを崩してみせ――。

 

 

映画マニアの安楽椅子探偵とパシリワトソンのバディもの

今大人気のミステリ作家、斜線堂有紀さんのデビュー作だそうです

 

魅力的な凸凹コンビにたまに女子高生も参加し、とても楽しいトリオもの

と思えば一筋縄でいかないのが斜線堂さんらしいです

日常系ミステリかなと思ったら非日常のスリルもあり、シリーズ通してタイプの違うミステリが楽しめました

 

探偵役の嗄井戸くんが映画マニアということで、いわゆるマニアが好きな「名作」の話しか出ないのかなーと思いきや

バックトゥーザ・フューチャーからドラえもんインセプション、ブレアウィッチプロジェクトまで、ポップコーンムービーから低予算ホラーまで網羅してくれてて大歓喜

もちろんどれも名作ですが、小説に出てくるタイプの映画じゃ無いと思ってたので楽しかったー

 

映画好きの人はぜひシリーズ3作通して見てほしいし、出てきた映画を追って見てみるのも楽しいかも

私も半分くらい見たことない映画だったので追いかけたいと思います

ホラー小説感想 : 予言の島

 

 

[あらすじ]

瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。二十年後《霊魂六つが冥府へ堕つる》という――。天宮淳は、幼馴染たちと興味本位で島を訪れるが、旅館は「ヒキタの怨霊が下りてくる」という意味不明な理由でキャンセルされていた。そして翌朝、滞在客の一人が遺体で見つかる。しかしこれは、悲劇の序章に過ぎなかった……。

 

今一番好きな作家 澤村伊智さんの長編ホラー

怒涛の山場に2度読み必須の結末、最高のエンタメ小説でした

かなりミステリっぽいので怖いの苦手な人も挑戦してみてもいいかも

 

※以下感想 微ネタバレ注意※

決定的な内容には触れてません

 

 

澤村さんの作品は怖いのはもちろん、結局は人が一番怖いという作風がツボで今貪り読んでます

訳のわからない化け物も怖いんだけど、一番ゾッとするのは人

今回も人間怖かったですね

 

澤村さんは地元が近いようなので、その影響か文章がすごく読みやすく感じるんですよね

ただ、今回ちょっと文が散ってて読みにくいかなと思いました

「ぼぎわんが来る」でお馴染み比嘉姉妹シリーズ以外の長編読むの初めてだからなかと思ったんですが……

やっぱり澤村伊智は文章がうまかった!!!

最後ゾワッッッとすると同時に、それまでの違和感がすらする解けて感動しました

まだ1回しか読んでないですが必ず読み返します

 

冒頭に横溝正史の引用が載ってるんですが、本文の内容はある意味アンチホラー、アンチミステリーのような風体です

「ぼぎわん…」怖くても読めたよって人はぜひ読んでほしい

因みに私は数年前までホラー読めなかった勢です

ミステリ小説感想 : サーカスから来た執達史

 

今年の本屋大賞に「方舟」でノミネートされた夕木春央さんの大正浪漫ミステリー

少し幻想的でどんどん引き込まれてあっという間に読んでしまいました

 

[あらすじ]

「あたし、まえはサーカスにいたの」
大正14年。莫大な借金をつくった樺谷子爵家に、晴海商事からの使いとしてサーカス出身の少女・ユリ子が取り立てにやって来た。
返済のできない樺谷家は三女の鞠子を担保に差し出す。ユリ子と鞠子は、莫大な借金返済のため「財宝探し」をすることにした。
調べていくうちに近づく、明治44年、ある名家で起こった未解決事件の真相とはーー。

 

 

小説家を夢見る箱入りお嬢様が、名家の陰謀渦巻く宝探し合戦に巻き込まれていくミステリーアドベンチャーです

ストーリーも伏線あり、謎解きありの王道ミステリーで楽しかったのですが、キャラクターが魅力的で引き込まれました

 

※以下感想 ネタバレ注意※

 

小説読んでる時って声優さんの声でセリフが脳内再生されませんか?私はするのですが

今回はまさにそれで、主人公のおてんばお嬢様がcv日高のりこさん、奇想天外なサーカス少女がcv水田わさびさんでずっと再生されてました

 

割と勧善懲悪系なので読了爽やかで、血みどろホラーの合間の癒しでサクサク読んでおりました

明治〜昭和初期のミステリーが大好きなので、台詞回しとかトリックも含めて好きでしたね

現代的なギミックを駆使するミステリーより、新聞とか図書館とかで情報を探す話の方がワクワクします

 

夕木さん他にも大正ミステリーを書いてらっしゃるそうなので、それも読んでみたいです

小説感想 : 生命式

 

よく見る読書系YouTuberの方が村田沙耶加さんの大ファンという事で私も読んでみました

単行本の装丁もとても素敵で欲しかったのですが、文庫版もなかなか不気味で素敵

 

1冊に12篇入った短編集で、それぞれそんな長くないのでサクッと読みやすい

でもそれぞれ癖が強くて読み応えはどっしり

なんだかカロリーの高い1冊でした

 

※以下感想 ネタバレ注意※

 

 

どの話も今の自分の倫理観をガツガツ揺さぶられるような話ばかり

「おかしな人」や「おかしな世界」の話ではなく、読んでると自分の価値観がおかしいのではないかと錯覚するようで、でもとてもリアルな生活感がある話ばかりです

今の世界にとてもよく似ているパラレルワールドに迷い込んだ気分になりました

 

一番自分の価値観にブッ刺さったのは2篇目の「素敵な素材」

SDGsが叫ばれる時代にこれは色々考えさせられます

ちなみに私は人骨家具ありだと思いました

動物の毛皮取るよりよくない?と思った派です

それくらい説得力があったんですね

 

どの作品もグロくないけどなんだか生々しい、人肌を感じる気がします

ちょっと気持ち悪い話も多いけど、文体は綺麗で読みやすくて、気軽に触れられる狂気って感じです

この世界観は好きな人はとことん嵌まりそうですね

次は「殺人出産」読みたいと思います

日記 : 積読録

今週のお題「読みたい本」

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積読の中でも、すぐ読みたいものor読みかけてるものを実際に積んでみました

 

こちらは先月買ったやつ

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「ババヤガの夜」 王谷晶

文庫化楽しみにしてて発売週に買ってきました 装丁も好き

「赤い部屋異聞」 法月綸太郎

江戸川乱歩のオマージュという謳い文句に誘われて買いました 表題作を読みましたが乱歩ファンは読んだ方がいい

 

こっちは昨日買いたてほやほやのやつ

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「三重露出」都筑道夫

カバーアートが桃桃子先生ということで購入 推しアメコミアーティストです 日本の書店の文庫コーナーに並んでるなんて最高すぎる

アダムス・ファミリー全集」チャールズ・アダムス

見た瞬間購入用に手にとってました フェスター叔父さんが好きです

 

読みたい本を積んでるだけでも幸せですね

 

読書感想 : 物理学者、SF映画にハマる

本屋で見つけてタイトル買い

映画よりだいぶ科学的な話に寄った本でした

 

映画に出てくる、例えば「タイムトラベル」であったら、「実際には不可能だけど、現実的に考えるならこれはこういう原理だよねー」とか、「こういう描き方だったら矛盾が少ないかなー」とか、そんな感じの温度感です

デロリアンを実現させるにはこれが必要だ!」とか「ターミネーターのいる未来ではこんな技術があるのだろう!」といった内容を少し期待していたのですが、ものすごくリアルな科学の本でした

「映画を題材にした時間と宇宙の物理学の超入門」といった副題でもいいかも

個人的に「スターウォーズ」の章でスタートレックの解説が出てきた時は、分けろよ!!と思ってしまった…内容的には「星間移動」の話だったから一緒でもいいんですけどね…

 

科学雑学の本としてはとても面白くて、知ってる話をとっかかりにしてくれているのでわかりやすくて読みやすかったです

バックトゥーザフューチャーとかは「映画の話はおいといて、タイムトラベルは…」感が否めなかったけど、ノーラン作品のTENETとインターステラーは他のどの映画よりも内容の解説がしっかり書かれてました

さすが初見で理解できない映画なだけあって、物理学のプロが見ても根拠に基づいた内容なんですね

公開時にも結構言われてたけど改めて実感

 

これ1冊分の知識が頭に入ってると、次SF映画見る時に違った視点で楽しめるかなーと思います

もし2冊目を出すなら、「アントマン」の量子世界と「アバター」の技術の話をしてほしい

小説感想 : アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険

[あらすじ]

「プレスター・ジョンの王国を探せ!」
マルコ・ポーロが『東方見聞録』を発表したのと同じ頃、行ってもいない東方世界の旅行記を著した稀代のペテン師ジョン・マンデヴィル。世に出るのを厭い、苔と羊歯の庭いじりを唯一の喜びとしていた息子アーサーは、ある日教皇から呼び出され、亡き父の書に記されたプレスター・ジョンの王国を探すよう命じられる。
しかしその情報源は父の遺したデタラメ旅行記だった。

 

 

これぞ大人のファンタジー

主人公が出不精の超インドア人間なので、休日を読書やサブスクで潰す我々にはぴったりの冒険譚です

お家に帰りたい…でも自分の好きなものの為ならもうちょっと行ってみようかな…のスタンスにめちゃめちゃ共感します

 

アーサーたちが出会う不思議なできごとは、空想のものっぽいんだけれど、あれ?どこかで聞いたことある?

どこかの伝説や、それこそ昔の歴史書にあったかもしれないようなものばかりで、当時の人たちは本当にそれを見ていたのではないかと思うほど

像の頭蓋骨がサイクロプス(一つ目巨人)だと思われていたのと同じ雰囲気の「不思議」がいっぱいでとてもワクワクします

 

内容ももちろんですが、何より装丁が非常に素敵

表紙と裏表紙の内側にそれぞれ絵巻がついてるんですが、読んでから広げてみると、アーサーたちの軌跡が異国風のイラストで綴られていて、旅のアルバムを見ているような気分になります

絵巻はネタバレ含むので、ぜひ読後に見るのをおすすめします

 

手元に置いておいて、何気ない時にパラパラめくりたくなる本

書影好きな方にもおすすめです